column
コンシエルジュの閑話休題

【 第8話 | 2014.8.7 】

基礎練『ハッシュ』

管理人である僕が講習会を始めたのは、気付けばもう5年前(2009年)の話。

始めたきっかけは、インラインスケートの初心者講習会は良くあるけれど、その後のスケートが上手くなる講習会をあまり見かけなかったことと、インラインスケートにいろいろな滑り方や楽しみ方があるのを知らずにやめてしまう人が、けっこういることを知ったのがきっかけ。

スラロームの講習会もあるけれど、これは専門的な内容になってしまっていて、スケーティング自体の上達が目的ではなかったりする。

そこで、前を向いてある程度滑ることはできるようになったら、その次のステップをフォローする講習会があってもいいのでは、と思い、基礎スケーティングをメインとした講習会を始めた。

そんな僕の講習会で初回から必ずしっかり時間を取って行っているのが、8の字×8種類の『ハッシュ』。

ただ8の字を描くように滑るだけでなく、後向きはもちろん、片足やターンしながら半回転するなど、8種類の滑り方でスケーティングの練習をするメニュー。

最初から今の形だった訳ではなく、教えて続けていくうちに、進化したり追加されたりと、いくつかの段階を経て、今の形に落ち着いていった。また、始めた当初は特に名称もなかったが、しばらくして8種類(はっしゅるい)そろった時に『ハッシュ』と命名した。

【 ハッシュのメニュー一覧 】

 1. フロントクロスオーバー

 2. バッククロスオーバー

 3. 前向き内足半円

 4. 後向き内足半円

 5. 前向きその場8の字

 6. 後向きその場8の字

 7. 前向き固定(両回り)

 8. フリー

この『ハッシュ』、元々は僕自身がインラインホッケーを始めた時に教えてもらった基礎練がベース。

本気でホッケーを始めるまで、すでに3年くらいインラインスケートで滑っていたので、滑ることにはそこそこ自信があったにもかかわらず、試合に出てみたら完全お荷物状態。

自分の滑り自体が試合展開のスピードにまったくついていけずに悔しかったので、基礎がしっかりできていたホッケーの上手い人に、1から基礎スケーティングの練習方法を教えてもらった。そしてそれを秋葉原の駅前広場で夜な夜な練習し続けた結果、ダッシュやターンなど、味方や敵の動きに即応した滑りができるようになった。

ちなみに、光が丘フェスティバルのデュアルレースで優勝できたのも、一重にこの毎晩の練習の賜物だったりする。そのくらい、ホッケーのスケーティング練習は効くんです!

ホッケー経験者は良く分かると思うけれど、ホッケーの試合でリンク内の選手は、もうひたすら走って止まって、また逆方向に走って、の繰り返し。そこで、いかに早くトップスピードに乗るか、いかに相手より早く切り返すかなど、素早く的確に動くためのスケーティングの基本スキルがとても重要になってくる。

そしてホッケーの練習で行う各種8の字の練習は、そういった基本スキルの中の『回る』『小回りする』など、できるだけ無駄な動きを省いて機敏に反応して滑るための練習方法となる。と同時に、機敏に滑るために必須な『スケートに乗る』ことを自動的に練習することにもなる。スケートに乗れていなければ、エッジを効かせたターンなど無理なのだから。

そのような訳で、各種8の字の練習はスケーティングスキルのベースアップにはもってこいの練習方法なのである。

このホッケーの8の字練習メニューに、さらにスラロームで必要になってくる重心移動や荷重なども意識的に練習できるようにと、オリジナルテイストを加えて作られた8種類の8の字練習メニューが、そう、『ハッシュ』なんです!

スラロームにハマっている人は、パイロンの外で滑ることが極端に少ないことが多く、また元々のホッケーの8の字練習メニューにはスラロームのレベルアップにも役立つ要素がしっかり含まれているので、講習会ではスラローマーの人たちにもきっちり最初からやってもらっている。

例えば、『ハッシュ』で一番初めに行う“フロントクロスオーバー”。これが左右ともに大きくきれいにできなければ、流れるような“飛燕”や“大蛇”はそもそも無理。この“フロントクロスオーバー”と“飛燕”の共通項は『重心移動』で、スムーズな重心移動はスラロームでスイッチを行う際の鍵。

他にも“その場8の字”は、戻り技やスピン技で必要な動きの基本動作のベースだったり、滑りの安定性向上に結びつく前後の“内足半円”はそもそもほとんど練習しないはず。

こんな風に、一見『ハッシュ』とスラロームは関係なさそうでも、根っこの部分ではいろいろ繋がっているんです。

どんなことでも同じだと思うけれど、基礎の部分をしっかり固めて、大きな土台を作っておけば、その上に乗る応用技もピラミッド状にたくさん積んでいける。

ところが基礎の土台が小さいと、その上に乗せられる応用技も少ししか乗らない。

また、もしクルージング(シティランやロングランなど)やスラロームに飽きて、アグレッシブやホッケーを始めても、基本の滑りがしっかりできていれば、新しいジャンルへの適応も楽しめるようになるのも早いはず。

『ハッシュ』は多少スラローム寄りの部分もあるけれども、そこを省いたとしても、残りの8割くらいはジャンルに関係なく、インラインスケートを滑るための基礎部分なので、初心者だけでなく、滑り込みが足りないと思う人も、ぜひこの『ハッシュ』を日頃の練習メニューに加えてみてください。

また、『ハッシュ』をきちんと教わりたい、どこが悪いのか分からないけれどスムーズに8の字を描けないなどありましたら、講習会も行なっていますので、こちらへの参加や依頼もお待ちしています!

《高田健一》

ライター