column
コンシエルジュの閑話休題

【 第17話 | 2014.10.23 】

なめらか&軽やか:基本の4輪目乗り編

第11話でスラロームをする時の"2輪目乗り”の効用を書いたけれども、これは基本をマスターした人が、なめらかに滑るスタイルを出していくための方法の1つで、いわゆる応用編的な乗り方。基本ができていない人が“2輪目乗り”を試そうとしても、おそらく減速してうまく滑れないはず。

では何が基本かというと、スラロームのフロント技は前から4輪目、すなわちかかとの下のウィールに荷重し、バック技はつま先側の1輪目のウィールにできる限り荷重してパイロンを滑り抜けること。これは当サイトのHowToのスラローム各技の解説にも書いてある通りだ。

ところで、よくフロントクロスを練習し始めた人から、
「フロントクロスでどうやったら漕げるんですか?」
という質問を受ける。しかし漕ぎながらクロスをするのは、下記の第3段階のことだと考えている。

  • 第1段階:まず開いて閉じてのクロスの動作を覚える。
  • 第2段階:左右の足の前後差をキープ(シザースの形)したままクロスをして、両足ともにかかと荷重で滑る。
  • 第3段階:パイロン通過中に漕いで加速していく。

では、なぜ第1段階や第2段階の人がこのような質問をするのか?

それはフロントクロス中に減速していってしまうからだ。減速するから、漕いで加速したいと考える。ところが、この考えが間違っているのだ。

もし無理なく軽やかに滑りたいのなら、『減速したら加速する』ではなく、『減速したら減速しないようにする』のだ。しっかりかかと荷重する、特に4輪目に体重の7割以上を荷重し続けることができれば、漕いで加速してから1個目のパイロンに入った時の速度をほぼ維持したまま、路面との抵抗もほとんど感じずに減速する感覚もなく、さらっとパイロン15個を通過できるはず。しかしフロントクロスをする時に1輪目や2輪目を使ってしまうと、普通は減速の原因となる。特に1輪目に荷重が掛かって路面と接触すると、一気に減速する。

ウィールの真上に乗る意識で4輪目に荷重して、つま先を振るように滑っていければ、減速を感じることなく、スーッとパイロンを抜けていける。これはフロントクロスに限らず、フロントパラレルやフロントワンフットなどのフロント技に共通した基本的な原則だ。ただしフロントスネークで“4輪目乗り”をすると“偽フロントスネーク”になる可能性があるので要注意。詳しくはフロントスネークの解説ページを参照のこと。

ちなみにバックパラレル、バッククロス、バックスネーク、バックワンフットなどのバック系の基礎技の場合は、荷重するウィールが4輪目ではなく1輪目となる。つま先側の1輪目にガッツリ乗ってかかとを振る。

まずこの荷重ポイントを押さえてクロスする基本フォームを覚えた上で、その形をなるべく崩さないよう、クロスの後にタイミング良く蹴っていく練習をすると、スマートなフォームで加速していくクロス技を習得できるはずだ。

クロスやワンフットなどの基礎技だけなら、この“4輪目乗り”をして足首を軽く振る動作で、パイロン15個を滑っていける。しかし、飛燕などのコンビネーション技や、ルーティンにスイッチ技やスピン技が小刻みに入ってくると、話が変わってくる。足の動きがいそがしくなってくるので、基本に忠実に、技ごとに4輪目や1輪目に荷重を乗り換えるのが難しく、スムーズな重心移動の妨げになったりする。ここで初めて“2輪目乗り”が出てくる。フロント技の時に、4輪目に乗っているのと同じスーッと抵抗なく滑る感覚を、2輪目に乗っても実現させるように滑る。これによって、体勢が変わるごとの細かい乗り位置の調整が不要になるのだ。そのため、“4輪目乗り”による減速しない滑りの感覚がわからないまま、見よう見まねで『2輪目乗り』しても、ただ減速する要因となってしまう。

もし4輪目に乗る感覚が分からなければ、その乗り方を分かりやすく習得する方法がある。 芝生の上を滑るのだ。

公園などのアスファルトの路面と芝生が隣接している所で、アスファルト上で軽く加速してから足を前後させてシザースの形を作り、そのまま芝生に入っていく。この時、両足ともしっかりと“4輪目乗り”ができていれば、芝生の上を滑っていくだろう。しかし、少しでもかかと荷重が甘いと、つま先が芝生にめり込んで転ぶはずだ。

この練習で芝生の上を滑っていけるようなったら、路上の点字ブロックや荒れたアスファルト上も同じ乗り方で滑り抜けることができ、小石などにつまずくことを避けられる滑り方でもあるので、街乗りしかしない人でもマスターしておくべきだろう。

このような訳で、僕自身は“2輪目乗り”の感覚も大切だけれど、それは“4輪目乗り”の感覚が体に染み込んだ上のこと。あくまで4輪目に乗れることが基本。そして“4輪目乗り”でフロント技が上半身がブレずに軽く滑れるようになったら、同じ要領でバック技を1輪目乗りで滑れるようにする。この最小の動力で『軽く滑る』が、なめらか&軽やかに滑れるようになる第一歩。

とは言え、いくら基本が大切だからと言って、加速してから“4輪目乗り”でさらっと滑り続けているだけでは滑り自体が上手くならず、滑りのスタイルも出てこなかったりするのだけれど、その辺りの話はまたの機会に。

《高田健一》

ライター