column
コンシエルジュの閑話休題

【 第19話 | 2014.10.30 】

なめらか&軽やか 腰骨編《2》

前回の第18話の通り、腰骨と重心の関係がなめらかな滑りには欠かせないのだが、腰が大切なのはそれだけではない。キレのある滑りにとっても極めて重要だ。

腰の回転の速さがそのまま回転動作のキレに繋がる。特に前から後ろ、あるいは後ろから前に向きを変えるスイッチ技のスピードは腰をいかに速く回せるかに掛かっている。例えば“くま殺し”はまさに腰の回転速度が命。ゆっくりやっていては技のかっこよさが出ない。瞬時の腰の回転から一気にバッククロスを入れてこそ、映えるのだ。

その練習方法として、ゆっくり直進しながら腰の半回転を繰り返して、前進と後進をできるだけ早く切り替えてみたり、ジャンプができればレイト(飛んで落下し始めてから回転する技)などがあるかと思う。どちらも腰や腰骨を、まずは確実に、次に速く回すこと意識しながら練習する。

また、素早く腰を回しても足下がぐらついては、技が決まらない。そこで腰のキレを出すには、下半身の安定も必要不可欠。柔らかい膝と足首、重心の絶対安定ポジション、両足の絶対安定スタンス、いずれも大切だ。当然、荷重しているウィールは腰骨の下。これらを反復練習で体に染み込ませて、回った後の安定感を得る。

そのためには習得したい技をひたすら練習するのも良いが、その前に両足接地した状態で必ず安定する体勢を知った上で練習するのも悪くない。

その昔、梁川さんの講習会でやっていた練習方法がある。まずダッシュして、それからトゥトゥスイッチやヒールヒールスイッチ(地面から足が離れるか離れないか程度に軽く跳ねてもOK)で前から後ろあるいは後ろから前に半回転して、全てのウィールが接地した瞬間に、体勢が崩れない自分なりの重心位置やスタンスが取れるようにするのだ。

他には、2人で練習しているのなら、お互いの肩が付くぐらい接近してゆっくり並走し、自分の肩で相手の肩を押したり押されたりして、両足が地面から離れないようにする練習も効果があるだろう。

どんな時でも一瞬で絶対安定の体勢になれるようにしておくのは、スラロームに限らずどのジャンルで遊ぶにしても覚えておいて損はない。バランスが崩れそうになったら、その体勢に持って行けば転ばずに済むのだから。

当然、なめらかにスラロームする場合も、腰のキレがあったり、絶対安定ポジション&スタンスを知っているに越したことはない。

腰の回転が速ければ、速く回っただけ回転後の時間が増えて動作に余裕が出てくるし、スピンの回転数を上げることも可能になってくる。

また、滑りながら要所々々で絶対安定ポジションやスタンスを取るようにして安定感をキープすることも可能になる。例えばスピンの後にバッククロスでパイロンを数個通過するようにし、仮にスピンでバランスが崩れても、クロスを開いた時に体勢を落ち着かせて安定感を取り戻すのだ。

スラロームをしていると、とかく足さばきばかりに気を取られ勝ちだが、足をどのような腰との位置関係で操作するのか、実はそこが技のやりやすさや完成度に大きく関係してくる。さらには下半身の安定が上半身の安定に繋がり、ひいては技の安定にも繋がる。

ただし、安定する体勢や腰位置は人それぞれ。骨格や体格、滑りのスタイルなどによって異なるからだ。

しかし安定した滑りと言っても、必ずしもどっしり低重心スタイルである必要はなく、腰骨が安定した状態で滑ることができれば、そこからなめらかで軽やかな滑りは生まれる。

ぜひ自分自身で安定感のある『要』のポジションを見つけて欲しい。

《高田健一》

ライター