column
コンシエルジュの閑話休題

【 第21話 | 2014.11.7 】

なめらか&軽やか 上半身先行編《2》

前回に引き続き、上半身先行とそれに伴う動作の話を。

さて、なめらかに軽やかに滑るために上半身先行を行うために心掛けていることのもう1つは、『コンビネーション』。

上半身先行動作がしやすくなるような技から回転動作に入るようにするのだ。『柔らかい上半身』より重要ではないかも知れないが、確実にスピンがやりやすくなる。

例えば前向きからスピンをする場合、その直前にバック系の技を組み込んでおき、スピンをするために前を向くことで上半身が回り、その自然な半回転を初動として利用し、そのまま上半身先行動作に繋げるのだ。さらに後ろから前に振り返る時に、大きな重心移動を起こすことができれば、回転力にプラスすることもでき、一石二鳥となる。[参考動画:loop(1:57〜2:10)]

あるいは、あらかじめ体をねじった体勢でスラロームをするようにして、スピンの動作に入る前にすでに上半身先行の形を作っておくのだ。そしてスピンをしたいタイミングでそのねじれを開放してあげると、元に戻ろうとする勢いが自然と生じるので、それを利用してスピンをする。身も蓋もない方法だが、確実に上半身先行の体勢で、一切力むことなく軽くスピンができる。ただそのためにはアンチバックスネークができるなど、進行方向への視界をキープしたまま深く回し込んでおけるだけの、根本的な体の柔軟性が必要となってくる。[参考動画:スラローム トリック『ハイランダー (Highlander)』(最初のアンチバックスネークからの回転動作)]

ここで注意点を1つ。

なめらかさや軽やかさのある滑りをしたいのなら、上に挙げた2つのコツを踏まえて上半身先行で回る時に、腕をブンブン振り回さないようにして欲しい。

頭を先行させて回転した時、何も考えずに、頭に釣られて腕をブンッと振り回してしまうと、体の軸から離れた腕が遠心力に引っ張られて制御しづらくなる。さらにその腕に釣られて上半身が振られてしまう。そうなると回転軸がズレたり、安定していた上体が動いたりして、それをまた腕でバランスを取ろうとして……、と悪循環に陥る。それだけでなく、腕がバタバタともがくような滑りを見た人も、決して良い印象は受けない。

そこで『ひじ』を使うのだ。

回転速度を上げたいなど、回転力を得たい場合は、手の先などのひじより先の部分は曲げてたたむ。そして頭と一緒に肘を先行させて回すと肩も回るので、十分に上半身先行を意識した回転動作となる。ダンスのスピンを練習している人が良くやっている、腕をたたんで肩と平行にして回るスピン、あの方法と原理は同じ。

そしてひじの次は『肩』。

ひじを使って上半身先行動作ができるようになったら、今度はひじではなく、肩の押し引きだけを利用するのだ。結局、肩の回し込みが上半身先行動作の決め手となるのだから、回りたい方向の『肩を軽く引く』あるいは反対側の『肩を軽く押す』ことによって、上半身先行となるきっかけを作るようにする。当然、上半身が力んでいたら、肩の軽い押し引きは難しく、できたとしてもスムーズな回転動作のきっかけにはなりにくいので、柔らかい上半身は必須となる。

ただし、1回転を超えるスピンや速いスピンなど、通常以上の回転力を必要とする場合は、手の先まで使って大きく腕全体を振ることもある。しかしその場合でも、回転中は腕をたたんで体に付けるようにし、遠心力の影響を受けないようにする。手を振るのは、あくまでスピンの予備動作の時だけだ。[参考動画:スラローム トリック『フレンチロール (French Roll)』

このように上半身や腕を意識的に柔らかくしてあげることにより、自分の体を制御しやすくするだけでなく、その滑りを見た人にも柔らかい滑りの印象を与えることになる。

いろいろな人の滑りを見てみると、上半身が硬い人は滑りも硬いことが多いのが分かると思う。裏を返せば、柔らかい滑りをするには、上半身が力んで硬い状態ではダメだということだ。アイスのフィギュアスケートの荒川静香さんや浅田真央さんの上半身のしなやかなこと!

もしなめらか&軽やかな滑りを目指すのなら、自分が滑っている時の上半身の力の入り具合を確認してみてください。背筋が伸びて軸が出ているけれど、肩も腕も無駄な力みはなく、上半身に適度な柔らかさが出てくれば、きっと滑りにもその柔らかさが表れてくるはずです!

《高田健一》

ライター