column
コンシエルジュの閑話休題

【 第32話 | 2015.1.29 】

ベアリングの王様《2》

前回に引き続き、ご機嫌な滑りを味わえる、こだわりのベアリングのご紹介。

さて、今週はトップ2の発表です!

【2位:WITCH TYPE-S (SPEED RING)】

2006年に登場したWITCHが、最初にリリースしたのがこの『TYPE-S』。発売当初は『SPEED RING』という商品名だったが、その名が表す通り、何しろ速かった! 2008年の光が丘フェスティバルのデュアルレースで優勝した時も、もちろんこの『TYPE-S』を入れていた。

さらにすごいのが、オイルが抜けないのだ。100時間、200時間滑っても、オイルが抜けた感じがせず、ずっと調子が良いまま。本当にオイルが入っているのか、心配してしまうほどだった。

ただ、スラロームで使うと、すぐにガーガーと音が鳴り始める。オイルが抜けた『Bones Swiss』のような音がするのだが、実際は何の問題もなく、ビュンビュン回ってくれる。

それから価格が確か14,000円で少々高かった。でも、1年以上は初期の性能を維持したまま使えた上に、性能が落ちてきたと言っても『Bones Swiss』よりは回るんじゃないかというレベルなので、コスパはそれほど悪くなかった。

しかしこのベアリングは残念ながら、発売後数年で市場から姿を消してしまった。

【1位:WITCH TYPE-T】

速い!安い!長持ち!三拍子揃った、これ以上ないベアリングがこのWITCHの『TYPE-T』。8,000円で2〜3年は十分に使える上に、『Bones Swiss』並に速い。最上級の性能を持つのにコスパも最高、おそらくこれを超えるものはないだろう。

オイル抜けは『TYPE-S』よりは早いが、通常使用で3ヶ月以上はメンテせずに使い続けられるはず。時々音がうるさくなったものだけにオイルを注したり、ウィールを交換する時に洗浄したりすれば十分。これでスラロームもアグレッシブもホッケーも何に使っても大丈夫。そして洗浄すれば、買った時のご機嫌な状態に何度でも戻るのだ。

速さは『TYPE-S』と比べてしまうと劣るかもしれないが、『Bones Swiss』よりもスムースな滑り心地で同レベルの速さなのだ。

そして何より、決定的な欠点が見当たらないのだ。まさにベアリングの王様!

ところがこの『TYPE-T』、2011年3月の震災で工場が被災し、このベアリングを作るための型が使えなくなり、販売終了となってしまった。ただ、復活を望む声はWITCHの篠田さんに届いているので、近い将来、再販されることを期待したい。

【番外編:WITCH TYPE-G】

WITCHは現在、『TYPE-G』という金色のベアリングを出しているが、どんなに無理な角度から負荷を掛けても減速を感じない構造・特性となっていて、スラローム専用ベアリングといったものとなっている。特に低速時にこじるような滑りをしても、速度を維持してくれるのには本当に驚く。

一方、普通のストライドでのスケーティングは一蹴りの伸びが感じにくく、WITCHの魔法がかかったような心地良い滑りは味わうことができなかった。長距離を滑るのにはあまり向いていないようだ。

このように使用が限定されてしまうという理由で、ランキング外としたが、オイル抜けが遅く耐久性も高いので、ほぼスラロームしかしないブーツに入れるのであれば、自分はこの『TYPE-G』を選択する。

さて、ここまで6つのベアリングのランキングを挙げたが、あくまで管理人の個人的な使用感をベースにしたものだ。当然、WITCHよりNiNjaの方が好きという人もいるだろうし、安価に入手できる工業用ベアリングを使い捨てにするのがベスト!と言う人もいるだろう。人それぞれ好みがあるので、それを否定したりはしない。

ただ自分は、一蹴りした時にぐーっと伸びのある加速や、軽い加重や重心移動に機敏に反応してくれる感覚が大好きで、これを味わうと一瞬で気分が上がる。そして気分上々になれるかどうかの鍵となる、重要なギアの1つであるベアリングにはゴリゴリにこだわりたいのだ!

そんなこだわりから『TYPE-T』使い続けていたのだけれど、上に書いた通り、残念ながら現在は販売中止となっている。2位の『TYPE-S』も今はもう入手不可能。『Bones Swiss』でもいいのだけど、細かいメンテなど気にせず使える『Deeport Black-9』も良いし、密かにNiNjaの新オイル入りのABEC7も気になっているし……。と言う訳で、次に購入するベアリングの選択がとても悩ましい今日この頃です。(笑

《高田健一》

ライター