column
コンシエルジュの閑話休題

【 第33話 | 2015.2.6 】

極上なウィール《1》

インラインスケートのギアの中で、僕が最もお金をつぎ込んで、最も数多く購入したであろうもの、それはウィール。

最近でこそ1年間に1セットも使い切らなくなったが、毎日のように滑っていた時期は、1ヶ月に1〜2セットは交換していた。なので、円高の時は海外から半年分をまとめ買いしていたことも。なので、20年前からいろいろ使ってきたので、ウィールの好みはうるさいです。(笑

ただ、一括りにウィールと言っても、お手軽なフィットネス用やホッケーのインドア用、小径のアグレッシブ用や大径のスピードスケート用など様々。そこでまず、これまで何百個使ったか分からない、スラロームやフリースケートで屋外の路面を滑るのに向いているウィールについて。

屋外用ウィールで外せないメーカーと言えば、そう、『HYPER』。価格で品質の差はあれど、このHYPERのウィールを入れておけば、まず間違いない。

その中でも、特に強力なグリップ力を求めるのなら、通称『柿』と呼ばれている、オレンジ色の『PRO250』の84A。アウトドアホッケー用なので、ギリギリまで倒し込んでカーブを切っても、すっぽ抜ける感覚はないのは、さすが15年前からのベストセラーだけある。同モデルに黄色い82Aもあるが、グリップ感が強すぎて粘っこい滑り心地に感じてしまうので、僕自身はこれは必要ないと思っている。

『PRO250』と同じコアを使用して、ウレタンを新素材に変えて発売された『Concrete +G』も外せない。

発売された初年度は日本に入ってこなかったので、翌年早々のフランス旅行の際にパリのショップで在庫を買い占めたり、ベルギーから大量に運んで来てもらったりした。ところがその後間もなくして輸入代理店が代わり、担当者に『Concrete +G』の良さを話したら、あっさり国内での販売が始まった。(笑

そして現在、このウィールの人気っぷりは、S-FOURのウィール売り場を見れば一目瞭然だ。フェイスを占めるカラー展開の豊富さは、海外でも相当売れていることの表れのだろう。

このウィールの特徴は、倒して込んでも抜けない程度のグリップ感はあるものの、必要以上にグリップ力がないので、加速しやすく、スピンやスライドもやりやすいこと。さらに削れにくい上に、飛んだり跳ねたりしてもコアの剥離やパンクもないので、かなり長持ちする。さすがHYPER!という高品質なウィールで、『柿』の代わって、この『Concrete +G』をずっと使い続けると思っていた。

このように、欧州から大量買いするほど惚れ込んでいた『Concrete +G』だが、使い始めたその年の11月、衝撃の出会いをする。それは、スピードスケート用ウィールで有名な『Matter』が初めて発売した、フィットネス用ウィールの『Freeride』だ。

小さめのコアに厚めのウレタン。少し硬めと聞いていたけれど、実際に滑ってみると、厚めのウレタン部分が路面から受ける振動をより多く吸収してくれるためなのか、今まで味わったことがないスムースな滑り心地! グリップ感はしっかりあるのに、スピンもスライドもやりやすく、耐久性も十分。『Concrete +G』よりも安心してウィールを倒し込めるのに、滑り心地は極上シルクのようで、スラロームや街乗りに向いているのだ。

この後、青紫の『CrazyGlue』や黄色の『Juice』が発売されるごとに使ってみたが、基本的な特性は変わらない。そして、Matterの中で最も柔らかい『CrazyGlue』は、僕が最初に感動した極上のスムース感がしっかり味わえる、今一番のお気に入りのウィールだ。一方、それより少し硬めの『Juice』はスムース感が少し減る分、より一層あっさりした感触で、スピードが乗りやすい。もし可能なら、夏は『Juice』、冬は『CrazyGlue』と使い分けられるとベストかな、と思っている。

Matterのウィールは種類問わず、HYPERの『PRO250』や『Concrete +G』に比べて不思議なくらい人気がないようなのだが、自分はこの独特の極上スムースな滑り心地から、もう離れることができない。厚めのウレタンが潰れる滑り心地が嫌いだと言う人もいるけれど、自分は次の衝撃的な出会いが来るまで、このMatterのウィールを使い続けていくつもりだ。

このMatterのウィールは、S-FOURやDeeportの通販サイトから、だいたいいつでも買えるので、お気に入りのウィールを探しているのなら、ぜひ試してみて欲しい!

《高田健一》

ライター