column
コンシエルジュの閑話休題

【 第43話 | 2015.4.9 】

ワンフットができたら初心者卒業! さらに……

僕はかなり以前から、片足で滑ることができるようになったら、初心者卒業だと思っている。なぜなら、滑りが初心者っぽくなくなるから。(笑

その理屈は以下の通り。

ただ普通に滑る時、慣れてくると片足交互に地面を蹴って滑っていき、両足が接地している時間がほとんどなくなる。地面を蹴り、その足を戻しながら、もう片方の足で地面を蹴り……、つまりこの繰り返しになるので、『滑る=片足に乗る』ことになる。だから、片足時の安定感が増せば、自然と滑りの安定感も増す、という訳だ。

15m以上の距離を片足のまま滑り続けられるようになると、ウィールのインエッジだけでなく、真上にも乗れるようになっているはずで、そうなると普通のスケーティングを見ていても不安定さが消えている。たぶんスケートをしたことがない人が見れば『上手に滑ってる!』と思うだろう。この状態になった時に、僕は『初心者卒業』だと考えている。

スラロームでも同じで、“フロントワンフット”は基本中の基本の技。これでパイロンを貫通できるようになったら、スラローム初心者卒業だと思うので、その後はバック技などにどんどんチャレンジしていって欲しい。

もちろんこれでワンフットは終わりではない。

8の字(ハッシュ)の“フロントクロスオーバー”や“前向き内足半円”を練習して、片足でアウトエッジにもしっかり乗ってコントロールできるようにしていく。

そうして、片足のインエッジにもアウトエッジにもぐらつかずに乗れるようになると、基本的なスケーティングはもちろん、いろいろな技の安定感や完成度がかなり上がってくるはず。

裏を返せば、滑りや技の安定感に欠ける場合は、片足でウィールの真上やアウトエッジにしっかり乗れていないことが考えられる。

後ろ向きの場合も同じだ。

さすがに、バックワンフットができないとバックの初心者卒業とは言わないけれど、やはり前向き同様、きちんと腰を開いた姿勢で後ろ向きになり、ぐらぐらしないで片足で10mくらい進めるようになると、バック時の安定感がぐっと上がってくる。

さらにバックのクロスオーバーバックの内足半円も練習して、アウトエッジにもしっかり乗れるようになると、バックスケーティングはもちろんのこと、バックのスラローム技も一段と安定してくるはずだ。

ちなみに、有名なスラローム技“飛燕”や“大蛇”などは常に両足接地だけれど、実は左右交互の片足荷重を続けていく技なので、前と後ろのワンフットができるときれいな“飛燕”や“大蛇”の習得が早い。

特にクローズターンと言われている、バックからフロントにスイッチする時だ。ターン(後ろから前に向く動作)の先行足の真上に乗り、上半身が前を向く時にその先行足のウィールがアウトエッジ側に倒れながらもしっかり荷重し続けられると、減速せずにきっちり加速するポイントになる。

そのような訳で10年くらい前は、前後のワンフットでスラロームができないと“飛燕”は教えないとうそぶいていた。(苦笑 もちろん今は教え方が違っているので、そこまでの技量がなくても“飛燕”の大もとの動きから教えているけれど、やはりどうしても片足荷重の安定感で完成度が全然違ってくるので、前後のワンフットができるに越したことはない。

こういった“飛燕”などの複合技に限らず、両足接地しているスラローム技でも10:0の割合で左右どちらか片方の足に荷重していることが多い。と言うよりも、10:0の荷重でなければ上手くできない技があるだけでなく、極端な話、どんな技でも10:0の荷重でできない技はないと思うくらいだ。つまり、どのようなスタンスや向きでも10:0の荷重ができれば、いろいろな技の習得が早いという訳だ。

だから、ブーツの傾きや荷重するウィールがどこであれ、的確に片足の荷重ポイントだけに100%荷重して安定して操作ができることが、スラロームの上達の近道だと考えている。そしてそれは、左右どちらの足でも安定した前後のワンフットができることと、ほぼイコールだと思っている。

こういった考え方から、僕が基礎スケーティングやスラローム技を教える時は、片足で滑ることに重きを置いている。時にはパラレルなどの両足接地の技に練習時間を割くこともあるが、それは最終的に正確なワンフットができるようになるためだ。

長年インラインスケートを続けていると、人によって理論が異なってくる場合もあるので、僕のワンフット重視の考え方に疑問な人もいると思う。ただ、この考え方に基いて教えた人たちがどんどん上達していっているし、もちろん僕自身もまだまだ足りていないワンフット系動作の練習を続けている。また、アグレッシブのベテランさんの中には、両足接地のグラインド技の精度を上げるために、片足でのロック技を練習している人もいたりする。

このように、片足で滑れるようになることは初心者卒業となるだけでなく、技の上達に伸び悩んでいる人も一度立ち戻って、その上達レベルに合わせた片足乗りの強化練習を試してみてはどうでしょうか?

《高田健一》

ライター