column
コンシエルジュの閑話休題

【 第44話 | 2015.4.16 】

トリスラのルーティン作りのポイント

今週、光が丘カップの出場者リストが発表され、選手となった人は『さて、ルーティンをどうしようか…』と悩む時期になりました。(笑

僕自身も大会用のルーティンを何度も作り、また一方で、審査員という立場からいろんな人のルーティンを見てきました。

そこで今回は、そんな僕自身の経験に基いた、トリックスラローム大会用のルーティン作りについて、話したいと思う。

と、その前に、僕自身の見聞を3つほど。

2004年の光が丘カップ後のしばらくの間、週末に代々木公園の原宿口前にパイロンを1列並べて、仲間とスラロームをしていた。当然『見られること』を意識して滑ることになり、またそれがそこで滑る目的でもあった。そして、どんなに難しい技をやっても途中でパイロンを1つでも蹴ると、見ている通行人は『あ〜あ』と残念そうになり、単純なワンフットでもノーミスで駆け抜けると『おお〜!』となる通行人の反応を体験する。

さらに同年の7月、道満や駒沢や徳島のスラローム仲間と代々木公園の原宿口前で、ゲリラ的な総当り戦のプチ大会を行った。ルールは2人が1本ずつ滑り、審査員がかっこいいと思った方が勝ち。そして審査員は対戦直前にたまたまその場を通りがかった人で、スラロームはもちろん、インラインスケートのこともよく知らない人たちに審査をお願いした。

この時に、この年の第1回光が丘カップのオープンクラスで優勝していた徳島のとっくんに、僕が勝った対戦があった。とっくんは光が丘カップでのルーティンで滑り、僕は高速でフロントワンフットからバックワンフットにスイッチしてパワースライドで止まるだけの超簡単ルーティン。それなのに、その簡単ルーティンの方が評価された。何をしているのかさっぱり分からない動きより、単純で分かりやすい方がかっこいいと思われる場合があるということなのだ。

月日は下って2010年頃の話だったと思うが、とあるフリースタイルスラローム(FSS)の大会の結果を見て、SEBAのSébastienが全体通してかっこいいルーティンを滑った人より、難易度の高い技を繋いだルーティンの人の方が点数が高いことに、かなり怒っていた。

これらの話を持ち出して何が言いたいかというと、スラローム技の難易度とかっこよさはイコールではないということ。そしてこの感覚は光が丘カップを作った人たちに共有された意識で、今でも審査員に共有されていることだと思う。

なので、ルーティンに高難易度の技をたくさん繰り出したとしても、それがインラインスケートのスラロームを初めて見る人にかっこよく見えないと思われるのであれば、必ずしも勝てるとは言えない。

まずこれを理解しておくと、大会用のルーティン作りを進めていく際に、明快な技の選択の基準ができると思うのだ。

さて、僕がルーティンの構成要素を準備するに当たり、その下敷きにするのが『起承転結』という流れ。これは光が丘カップを創設したうほさん(村上さん)が良く言っていたことで、技の配置の分かりやすい目安になる。
 起:入り
 承:適度な強弱をつけて小技を挟む
 転:大技の見せ場
 結:締め

例えば、最初や最後のパイロンをフロントスネークなどでさらっと通過してしまうと味気ないし、前半に一番の大技を持ってくると尻すぼみな印象になる。そういったことを防ぐために、この『起承転結』を念頭に置いて、技の配置をすると良いと思う。そしてパイロン15個あれば、起承転結は十分に表現可能なので、『戻りは不要』と良く言われたりするのだ。

ちなみに僕の2006年光が丘カップ優勝時のルーティンは、うほさん曰く「あれは『起承転転』だ」と。つまり『くどい』との評。中間のバックワンフットでいくらさっぱり感を演出しようとも、後半はずっと回ってるから、くどすぎなんです。

ただこのルーティンは、高速で半回転のスイッチ技を入れていくスタイルがほとんどだった当時、『ぐりんぐりんとスピン技を入れるスタイルもありじゃない?』という提案の気持ちを込めたもの。そこでスピンを印象付けるために、4つの技を繋いで連続3.5回転させるものにしたのだけれど、まあ、何にせよ、くどいルーティンなのは否定しません。(笑

それから、『ルーティンの作り方が分からない!』という話も良く聞く。

その時に僕が提案するのは、
・基礎技×3〜4(クロスやスネークなど)
・小技×1〜2(スイッチ技やスライド技など)
・大技(スピン技など)
を挙げてもらい、『起承転結』に沿って当てはめていく方法だ。

最初に挙げる各技は、全て自分が得意なものでOK。ただし、最初に述べた理由から、大技や小技はできるだけかっこよく見せられる技にすべき。

そして『転』に当たる部分からルーティンを組んでいき、入り技や技を繋ぐスイッチ技などを加えつつ、各所調整をしていく。往々にして調整段階で、最初に挙げたもの以外の動きが出てくるので、できる動きや技が多いに越したことはないのだけれど、できないものはできないので、技や動きを変更するか練習して克服するかを選ぶことになる。

そうして、できあがったら実際に通して滑って全体の流れを確認し、最終調整をして仕上げるのだ。

以前はこういったルーティン作りのワークショップをやっていたけれど、今は僕自身の都合でなかなかできない。でも光が丘カップのルーティン作りの時期ということもあるので、希望者がいれば人数は限られますが、次回(4/19)のスラローム講習会で行おうと思います。希望される方は講習会ページの参加申し込みフォームより、『習得したい技術や要望など』の欄に『ルーティン作り希望』と記載の上、お申込みください!

《高田健一》

ライター