column
コンシエルジュの閑話休題

【 第45話 | 2015.04.24 】

ルーティンとラーメンのただならぬ関係

前回はインラインスケートのスラローム、特にトリックスラロームと呼ばれる形式の大会用ルーティンを作るに当たり、『起承転結』という流れから見てみた。今回も同じくルーティンを作る時や見る時の僕なりの心掛けや気にすることを、別の角度から見てみようと思う。

皆さんが良く知っている『ラーメン』に例えながら!(笑

まず自分の技量が『どんぶり』。

どんなにたくさんの麺や具材を入れたくても、どんぶりが小さければ入り切らない。スラロームのルーティンも自分の技術レベルに応じた技を盛り込まないと破綻する。

多少背伸びした内容を入れるのはアリだと思う。しかし、バッククロスができないのに飛燕の動きを取り入れようとするのは無理がある。今まで積み重ねてきた基礎練や習得した技の内容などから、しっかり自分の器のサイズを把握した上で、ルーティンに入れる技や動きを選択していく。

次に腰の高さやスタンスなどを含めた姿勢、ベースとなる普通のスケーティングやスケートの乗り方など基本的な滑りが、ラーメンの『スープ』に当たるだろう。

スープによって大きくジャンル分けされるラーメン同様、インラインスケートのスラロームもパイロンに入る前の滑りや姿勢からどんなスタイルかが伺い知れる。

そして当たり前のことだけれども、スープの味がいい加減だと、ラーメン全体が美味しく思えない。スラロームも同じで、まずその人の基礎スケーティングの完成度が全体の完成度を左右する。全ての土台となる普通の滑りが頼りなければ、その上にどんな大技を持ってきてもビシッと決まることはないし、そもそも滑走自体もボロボロのはずだ。

オーソドックスな基本技、クロスやスネークなどが『麺』。

当たり前だが、ラーメンにおいて麺は欠かせない。麺をすすってから具を食べ、また麺をすする。その麺において、太さや硬さ、香りなどは重要な要素だ。

スラロームの基本技も同じで、ルーティン中ずっと回転技を続けるということはなく、大技小技の間に基本技を挟んで、体勢を落ち着かせたりするはず。また、大技小技も基本技がベースになっていることも多いだろう。この欠かせない要素である基本技がしっかりできていないと、ルーティンの屋台骨がぐらつくことになる。安定した姿勢でバック技ができていないために、上半身がバタついてしまってる滑走を時々見かけるが、まさにこれに該当するだろう。

そして、スイッチやスピンの回転技などの大技小技がトッピングの『具材』だ。

具がなくてもラーメンはラーメンだけれど、おいしそうな具がたくさん麺の上に乗っていると、やっぱり嬉しい。王道的なシナチクとナルトとチャーシューと海苔でもいいし、味噌ラーメンにたっぷりコーンとバターもいい。所によってはカニやホタテなどの海の幸が具ということもあるだろう。しかし、具材が豪華だからと言っておいしいラーメンだとは限らない。具材同士、はたまたスープや麺との調和も大切だ。

スラロームも同じ。どういった回転技を入れるか、どんな小技を挟み込むかが重要なポイントになってくる。当然、大技だけでは大味で飽きてしまう。華やかな大技は適所に適量を配置することによって生きてくるのだ。

また、具材のこだわりも見せ所だ。同じ素材でも、例えば、昔ながらの薄く切った硬めのチャーシューなのか、甘辛肉厚とろとろチャーシューなのか、同じ豚肉でも調理の仕方によって全然違うものになり、そこからお店のこだわりが見えてくる。

スラロームも同様で、例えばワンフットスピン。同じ回り方でも、回転速度やフリーレッグ(上げている方の足)の使い方で、見え方が全然違ってくる。そうやって足先や指先の動きまでこだわってルーティンに技を盛り込んでいくと、スタイルがぐぐっと前面に出てくるものになる。

最後に全体を整え、見栄えを決定付ける『盛り付け』。

作るラーメンにふさわしいどんぶりは用意されているか、スープは適度に熱いか、麺はきちんとほぐれているか、具は何をどこに置くおいしそうに見えるのか。どんぶり全体を俯瞰して、最終調整をするのだ。

スラロームだって適当に組み合わせて滑るだけでは、どんなに各技の出来が良くても、かっこよく見なかったりする。自分の滑りをより一層かっこよく見せるには、服装やブーツから入り、基本姿勢やスケーティングに手を抜かず、基本技の滑り方にもこだわり、大技&小技はどのタイミングで繰り出すと効果的なのか考え、場合によっては大味過ぎたりこってりし過ぎないように技を減らすことが必要な場合も出てくるだろう。そうやって起承転結などを軸に置いて、全体の流れの強弱や塩梅などを調整し、ラーメンでいうところの例えば『味噌ラーメン』や『家系ラーメン』などに当たる、方向性やテーマに沿ってルーティンをまとめ上げるのだ。

こうして作られたラーメンが、昔ながらのあっさり醤油味の中華そばだったり、こってり濃厚な背脂チャッチャ系だったり、豪華絢爛な海鮮具材たっぷりの塩ラーメンだったりする。

ところが、どんぶりの大きさや麺の量や具材の量のバランスが崩れていたり、チャーシュー麺のはずなのにホタテが入ったり、同じ素材をたくさん入れて飽きさせる可能性などがあれば見直すべきだと思うし、それはルーティンも同じ。

そして自分で作ったルーティンも、何かのラーメンに例えられたり、ラーメンのように内容を表す名前が付けられれば、きっとまとまったルーティンになっているはず。ぜひしっかり滑りこんで、自信を持って披露してください!


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ちなみに、僕が2006年の光が丘カップで使ったルーティンは、『ちょっとどんぶりからエビの頭やホタテの貝がはみ出てる大盛り海鮮ラーメン』かな??(笑

《高田健一》

ライター