column
コンシエルジュの閑話休題

【 第46話 | 2015.4.30 】

テイルターン秘話

その昔、“飛燕”や“鬼足”などの新しい技の登場に触発されたスラローマーの間で、オリジナルの技を開発して、自分で命名するのが流行った時期がありまして、恥ずかしながら、わたくしもその輪の中で奮闘していました。(笑

4種のクロスのみを繰り返す“クアトロ”、当時は珍しかったフロントスネークからの片足スピン技“スカートめくり”、そのスカートめくりのバック版の“フレンチロール”、回りながら軸足を入れ替える片足スピンの“ハイランダー”などなど。

その中で、今でもいろんな人が技名を口にしてくれるのが、そう、“テイルターン”!

最近は足を前後に開いたシザースの形をキープしたまま、先行足を軸にして前から後ろ向きにスイッチする技が“テイルターン”と認識されているようだけれど、そもそもこの技をやるようになったきっかけの話を。

2004年頃、当時“龍旋”と呼ばれていた“大蛇”ベースの1.5往復のルーティンがあり、その後半に左右の足を素早くピラッピラッと連続して翻して半回転する部分があった。仲間内ではその動きを、作った本人の名前から“アライターン”と呼んでいた。ところが僕がいくらこのアライターンをやってもキレのある動きにならず、毎回ダメ出しされていた。

『それならいっそのこと、速さもキレもない動きをやってやろう!』と思い、後行足をわざと大きく引きずるようにしながら回し込み、『ぬべ〜』とした感じでゆっくりと半回転する動きを試しながらやってみた。そして、腰を低く落として後行足の1輪目のアウトエッジ側を地面にこすりながら回ると回転がスムーズにできることに気付き、それが“テイルターン”となったのだった。

ちなみに、名前の由来は、引きずりながら回しこむ足のイメージが爬虫類的な『大きな尾』だったのと、当時は『龍』が付く技名が流行っていたこともあり、『龍の尾を回す』という連想から“テイルターン”と命名。

こうして作ってみたものの、当時は高速でパイロンを駆け抜けていくのが主流だったため、仲間内では面白いほど見向きもされなかった。(笑 ところがそれからしばらくして神戸に滑りに行った時のこと。このテイルターンが大阪から来ていたTURBOさんの目に止まり、この技のコツを伝授することに。 それから間もなく、TURBOさんがこのテイルターンを使ってかっこよく滑る姿を見た関西方面の人たちの間で知られるようになり、さらにそれを知った関東のスラローマーにも逆輸入的な感じで伝わるようになった。僕が光が丘カップで優勝した時のルーティンにも入れていたので、それで知った人もいるかも知れないけれど、それより何より、関西のTURBOさんやアンナさんがテイルターンをかっこよく使って滑っていたので、関西発の技だと思っていた人が多かった。僕が毎週のように行っていたサイスタでも、僕が始めたとは知らずに、わざわざ関西のスケーターにネットを通じて教わっていた人がいるくらいだったのだ。(笑 それだけ関西のスケーターの方が僕よりかっこよくインパクトがあったテイルターンだったということなので、それはそれで僕としては嬉しいことだった。

それからかなり年月が経った近頃、「後ろの足を引きずってなくてもテイルターンって呼ばれてるよ」と聞いた。確かに動きがコンパクトになっていて、アライターンに近い感じで使っている人が多い気がする。僕としては、技が広まるにつれて汎用的に変容していくものだと思うので、名称だけでも残っているのは嬉しい。

ただ、本当は大きく足を引きずりたいのにできないのなら残念だし、当サイトでも“テイルターン”の解説動画を作りたいのだが、まだ先のことになりそうなので、ここで簡単にコツを2つ。

まず、荷重は10:0で、先行足に100%荷重する。後行足に荷重が残っていると、回し込み自体が難しくなる。それから、引きずる方の後行足は、バンパー(ブーツのつま先部分の外側)をこするくらいの気持ちでアウトエッジ側に寝かせて、引きずりやすくする。ちなみに、深く膝を曲げて腰を落とすと先行足に荷重しやすくなり、前後のスタンスも広くなって、後行足をアウトエッジ側に倒しやすくなって軽い力で大きく振り回せるでしょう。

何はともあれ、“テイルターン”をやり始めてから10年以上経つのに、いまだに気にしてくれている人がいるのは本当に嬉しい限り。これからも単品・応用問わず使ってもらえると、さらに嬉しいです!

《高田健一》

ライター