column
コンシエルジュの閑話休題

【 第47話 | 2015.5.21 】

初めてのウィール選び

たくさん滑って、たくさん止まって、何回もローテーションして、そしてどんどん小さくなっていく『ウィール(車輪)』。

初めてインラインスケートのブーツを買った後、最初に交換するパーツはおそらくウィールだろう。そしてインラインスケートを続けていった時に、最も買い換えることが多くなるのも、このウィールのはず。

メーカーはウィール交換の目安として、直径の1cm減を謳っているけれど、自分でグリップしなくなったと思った時が交換のタイミングだと思って良い。もちろん、ウレタン部分が一部欠けたり、樹脂製のコアが割れるなどのパンクをしたら、すぐに交換すべき。

ただ、高品質のウィールは滅多にパンクすることもなく、すり減ってきてもけっこうグリップ力をキープしてくれるので、結果としてコアの側面の縁を削り始めたり、ウレタンからコアが透けて見えくるなど、完全に寿命が来るまで使い切ることが多いはず。

と、まあ、そんなこんなでウィールを交換しようと思い、インラインスケート専門店に行くと、カラフルなウィールがずらーっと並んでいて、何を買ったら良いのか分からないかも知れない。

現在使っているものに特に不満もなく、同じものが置いてあれば、それを買うもの無難な選択として良いと思う。

しかしインラインスケートはギアスポーツ。自分好みのギアやパーツを使うのも醍醐味のひとつなので、ぜひいろいろ試して、自分好みの逸品を見つけて欲しいと思うのだ。

ウィール選びの基準として、ウィールやパッケージに記載されている『直径』と『硬度』がある。

『直径』はその言葉通り、ウィールの直径のミリ数だ。フレームなどに書かれている取付可能な最大直径以下のサイズを選べば問題ない。

ところが『硬度』が厄介。単位が『A』で記載されている数字がそれに当たるのだけれど、これだけではそのウィールの特性や品質はほとんどわからない。昔は硬度とグリップ力が比例していたので、硬度の数字を見ればグリップ感をある程度推測できた。しかしながら今の硬度表記は、同じメーカーあるいは同じ種類のウィールの中でどちらの方が硬いか柔らかいかの判断基準くらいにしかならない。二層・三層構造のウィールはもちろん、Matterの硬度の単位はそもそも『A』ではないから、もう他と比べようがない。

当然、『グリップ力』や『粘度』は、実際に滑ってみないと分からない。

『グリップ力』は、薄いコーティングを削り落とした後に、クロスオーバーやカービングなどで可能な限り倒して込んで抜けそうになる角度や、スライド技をして止まりやすさを試してみたりして、自分で実走して判断するしかなくなってくる。

『粘度』とは、正式な言い方では『転がり係数』と言うものに当たるのかもしれないけれど、ウィールの路面離れの感覚のことで、粘っこく感じると路面からなかなかウィールが離れてくれない感じがして滑る感覚が狂うから、僕はあっさりとした路面離れの良いものが好き。

ところがこのグリップ力と粘度は比例している訳ではなく、粘度が高いからといってグリップ力が強いウィールだとは限らない。また、粘っこいのにグリップしないウィールも存在していて、これらは僕にとってはこの上なく最悪のウィール。

こういったことは硬度の数字からは読み取れない。

その他にも、ウレタン部分が透明なら気泡の有無が分かるので、昔は品質の良さをアピールするために透明なものがけっこうあった。しかし、実は透明のウィールは不透明のものより削れやすかったりするので、最近はあまり見かけない。加えて言うと、白より黒の方が若干だけれど、硬くて削れにくい。ウレタンに色を付ける染料に由来することなのだが、このような情報は自らの経験から学ぶか、教えてもらうしかない。

さて実際にショップに行って、何を買ったら良いのか迷ったら、メーカーや価格で判断するのが手っ取り早い。

フィットネスやスラロームならHyperやMatter、ホッケーならLabedaなど、有名なウィールメーカーの製品なら、例え価格が安くても粗悪品に当たることはない。そのため、初めて交換ウィールを買う時など、何を買ったら良いのかわからない場合は、こういった有名ウィールメーカーの最安値のものを購入するのは悪くない選択だと思う。

それから、今のウィールは価格を裏切ることはほぼない。4個5,500円以上の高価なものは高品質で、グリップ力も耐久性も高く、かなり小さくなってきてもそれなりの品質をキープし続けてくれる。一方、4個3,500円以下のものは、安いなりの品質だと思って間違いない。グリップしない、削れやすい、パンクの可能性が高め、などなど。

とは言え、グリップ力やコストパフォーマンスの納得するラインは人それぞれ。さらに言うと、技術レベルによっても変わってくる。例えば初心者はウィールを意図的に削ったりこじるような滑りをあまりしないので耐久性はあまりシビアにならなくて大丈夫だとか、スピンやスライド練習するなら強いグリップ力は必要ないとか。

そのような訳で、初めのうちは買い換える度に異なるメーカーや種類などいくつか試して自分の好みを知っていくことができるとベスト。そして、その好みに合ったものを探したり、遊び方や滑る路面に合わせて選んでいくのだ。

また、自分に合わないウィールを使っていると、技の習得に影響する場合もある。だからインラインが楽しくなってきたら、早く上手くなるためにも、ウィール選びはこだわるべきだと思う。そして人が良いと言ったからって自分に合うとは限らないので、自分で実際に使用してみて判断した方が良い。

と言いつつも、僕のオススメはきちんとある。(笑

最初のウィール交換で個人的なイチオシは、Hyperの『Superlite』だ。信頼のHyperブランドながら安めの価格帯で、良い意味で特徴がないフラットな滑り心地を提供してくれる。僕は以前、このSuperliteを基準にウィールの良し悪しを判断していた。そこでまずはSuperliteを使って、それより硬めが良いのか、グリップ力が強い方が良いのかなどを判断していってみてはどうだろうか。

そして一度は使って欲しいと思うのが、Matterの『CrazyGrue』。第33話に書いた通り、僕はスラロームやクルージング用してはMatterのウィールが最高だと思っていて、目下の一番のお気入り&オススメのウィールがこれなのだ。しかしながら、僕が尊敬するSさんはどうやら粘っこく感じてどうやら好みではないらしい。好みが分かれたのは、僕が好きな要因の小型コア&厚いウレタンが裏目に出た結果だと推測するけれど、こういった感じで、人によって本当に好みが分かれる。

さあ、これから初めてのウィール交換をする人も、まだ自分のウィールの好みを知らない人も、ぜひともいろいろなウィールを試して自分好みのマスターピースを探し出し、快適なスケートライフを送ってください!

《高田健一》

ライター