column
コンシエルジュの閑話休題

【 第49話 | 2015.06.24 】

『できた』と『できる』、教え方のスタンス《2》

さて、前回からの続きで僕の教え方のスタンスについての2回目。今回は僕がどのようなこと考えながらに教えているのか、少し具体的な例を挙げていこうと思います。

例えば“フロントパラレル”。

スラロームで最初に挑戦することも多く、簡単にできるようになるので、さらっと流してしまいがちな技。かく言う僕もそのひとりだった。しかしきちんと教えるようになって、実はフロント技の基本がぎっちり詰まっているだけでなく、荷重ポイントを変えて滑ると、少し高度な動きの準備練習になったりもする、あなどれない The Basic of Basicsな技であることにも気付いた。そのため、僕のスラローム講習会に初めて参加する人は、必ずと言って良いほど、このフロントパラレルから練習してもらっている。

また、見方によっては、“フロントクロス”も“フロントワンフット”も、この“フロントパラレル”の応用技と見ることもできる。だから、これらの技がうまくできない人は、実は“フロントパラレル”の滑り方が雑なことが多い。そこで、荷重位置やエッジの乗り方などの甘い部分を、“フロントパラレルに戻ってしっかり修正して、それを体に馴染ませてから、再度チャレンジしてもらうと、あら不思議、するっとパイロン15個を貫通できるようになったりする。

それから“フロントワンフットスピン”という、少し高度な片足で回るスピン技がある。僕なりにこの技の源流を辿っていくと……、

  ●フロントワンフットスピン
     ↓
  ●フロントスピン
     ↓
  ●前向きその場8の字
     ↓
  ●前向き内足半円
     ↓
  ●フロントクロスオーバー

と“フロントクロスオーバー”に辿り着く。

つまり前向きの“クロスオーバー”がきちんとできていないと、“フロントワンフットスピン”は遥か彼方に見える遠い存在だ。しかしきちんと内足に長く乗れる“クロスオーバー”ができていると、上半身の使い方次第で“フロントワンフットスピン”で回れるようになったりする。

オープンバックワンフットスピン”も、前から後ろに方向転換する“4カウント”という技と“バックワンフット”ができていると、重心の乗せ換えのタイミングをアドバイスするだけで回れるようになる。

ワンフットスピンというと片足で回る高難易度の技のようだけれど、実は基礎技がしっかりできていると、こんな風に意外とあっさりできたりするのだ。しかし基礎技がいい加減な出来のままだと、技の難易度が高くなると習得に時間が掛かるし、そもそもどういうことに注意して練習をしたら良いのか分からず、ただ単に難しい技ということになってしまう。

そのようなことにならないように、僕が教える時はワンフットスピンに限らず、どんな技でも難しく思えるポイントを解きほぐして、構成要素を1つ1つ練習してもらう。それから構成要素を合体させていき、最終的に習得したい技をできるようになってもらうことを目指している。

10段の階段を一気に登ろうとして、上から先生に引き上げてもらうのではなく、自分の足で1段1段上がってもらうのだ。引き上げてもらっていたら、先生がいなくなったらできなくなってしまうが、自力で上がれたら、いつでもまたひとりで同じことができるはずだからだ。

このように僕の講習会は、
【 しっかり『できる』ようになってもらう 】
これを基本方針としているので、できたorできないなどの一喜一憂はないし、派手でキャッチーなこともやらない。しかし、できなかったことがしっかりできるようになって、うまくできなかった講習前との違いを実感して、その喜びをお持ち帰りしてもらえるように心掛けています。

僕の滑りはもちろん、講習を受けた人たちの滑りにも変な力みがないのは、こういった基本を潰し込んだ上での無理のない滑りを覚えていっているから。そして、とことんまで構成要素をさかのぼって、とここん基本を練習できるのも、スラロームに限らない動作の基本を練習してきた僕の講習会ならではだと思っています。

もし『できた! いや、できなくなった…!?』を繰り返している人がいたら、ぜひ僕の講習会に参加してみてください。きっと『できる、できる!』と、気分が上がる時間になるはずです!

《高田健一》

ライター