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コンシエルジュの閑話休題

【 第52話 | 2015.9.18 】

初めてのベアリングのメンテナンス《洗浄編》

前回はベアリングの日常的なメンテナンスを説明しましたが、今回は少し手間の掛かるインラインスケート用のベアリングの洗浄の方法を解説していきます。

長く滑ってくると、軽く滑っただけでベアリングから、ガーガーといったうるさい音がしてくる。もしオイルが抜けただけなら、前回に書いた方法でオイルを注せば解決。

しかし、どんなにこまめにベアリングの表面のホコリをはらっても、ベアリング内部へのホコリなど侵入は防げない。そしてオイル切れしていなくてもガーガーと音がし始め、ベアリングの回転が重くなってきたり、はたまた突然の雨で濡れた路面を滑ることを余儀なくされるなど、日常メンテナンスだけではベアリングの回転性能の回復が見込めない状態がやってくるでしょう。特に濡れた路面を滑った後は、一刻も早く洗浄しないと、普通のベアリングは錆びが浮き出てきます!

もちろん洗浄すべきタイミングで新品に買い替えるものありです。しかし同じものを大切に使い続けたいのであれば、いずれは洗浄をしなければならない時が来ます。

以下に僕のベアリング洗浄方法を説明していきます。(人によって多少やり方に違いはあっても、基本的には同じです)

【用意する物】

千枚通しか画びょう、密閉容器か超音波洗浄機、中性洗剤、水道水、ティッシュ、綿棒、アルミホイル、フライパン、ガス台。

【1】

まずシールド(内部にホコリなどが入らないように保護しているドーナツ型の薄い板の部品)を外す。両面外した方がベストだけれど、シールドを元に戻せないようなら、片面だけ外す。すでに片面シールド状態なら、そのままでもOK。また、ゴム板シールドの場合は、リテーナー(保持器:中のボールを等間隔に固定している部品)を外してから、裏から押して外すのが楽です。

【2】

リテーナーが樹脂製なら、これも千枚通しなどを使って外す。

【3】

密閉容器に水道水を入れ、そこに中性洗剤を数滴垂らし、ベアリングのパーツを全て入れてシェイク! 汚れがひどい場合は水を数回取り替えてシェイク!

僕は密閉容器でシェイクする代わりに、超音波洗浄機でブルブルさせている。しかしリテーナーを外した状態で超音波洗浄機にかけると、ベアリングが完全に分解される可能性が高い。分解すると汚れをきれいさっぱり落とせるが、乾燥後に内輪と外輪とボールを元の状態に組み立てる細かい作業が待っています……。

【4】

水で洗ったら、ティッシュや綿棒で水分と残った汚れを手早く拭き取り、アルミホイルを敷いて熱したフライパンの上に金属製のパーツのみを並べ、しばらく放置して完全に水分を飛ばす。フライパンの代わりに、トースターでもOK。

くれぐれも、ベアリングを置いた状態でフライパンを火にかけたり、トースターのスイッチを入れて焼かないないように。(笑

【5】

乾燥が完了したら、両面ともシールドが外されている場合は、片側だけシールドをはめてから、オイルを1滴だけ注し、少し回してボール全てにオイルを馴染ませる。ちなみに僕はWITCHの『SPEED OIL』がお気に入りで、販売された2006年からずっと使っている。

【6】

樹脂製リテーナーを外して洗浄した場合は、最後にそれをはめて終了となる。

と、ここまで読んでいただいて言うのもナンですが、文章だけでは分かりづらいと思うので、以下の動画も見てみてください。(笑

【参考動画】

● アグレッシブインラインの分解。ベアリングの分解と洗浄、グリスアップ 1

● アグレッシブインラインの分解。ベアリングの分解と洗浄、グリスアップ 2

さて、以上がベアリングの洗浄方法となります。

ベアリングの表面をティッシュで拭くくらいなら難しいことはないけれど、洗浄するとなると意外と時間が掛かり面倒。僕はお気に入りのベアリングをメンテナンスしながら大切に使い続けるのがベストだと思っているが、洗浄する手間暇がない場合は、安めのベアリングを使い潰して洗浄せずに新品に買い換えるのもアリでしょう。

そう言えば、昔は水は錆びるからと言って、灯油やシトラスオイルでベアリングを洗っていたけれど、最近は手早くやれば水でもOKと言われていて、これを知った時は洗浄のハードルがぐっと下がった思いでした。(笑

灯油は購入も廃棄も面倒だし、シトラスオイルは高価だし、でも水とマジックリンならそれら比べて何倍も手軽ですから!

雨や水たまりの中を走らなければ、さほど神経質になる必要はないけれど、時々ベアリングの表面を見たり、手で回して音を聞いたり回転のスムースさをチェックしたりして、その時々の状態に応じたメンテナンスをしてあげると、快適に使い続けられると同時に、長持ちさせてあげられると思います。

ベアリングは滑りの速度に大きく関わるギアであると共に、少々繊細なギアだったりも。そのため、面倒でもできるだけ気を配ったメンテナンスをして、長く気持ち良く滑らせてもらいましょう!

《高田健一》

ライター