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コンシエルジュの閑話休題

【 第55話 | 2015.12.25 】

初心者ほどギアに頼れ!

基本的に道具は値段相応の質だ。

だから高価なものは、高い分だけ高品質で扱いやすくできている。

と言うことは、つまり、その分野に不慣れな人ほど、少し値は張るけれど使いやすいものを使用すべきだと思うのだ。

インラインスケートで言うのなら、1足目を買ってしばらく滑ってみて、次に何かを買い換えるタイミングの時に、ランクがちょっと上の中から手が届くものを、思い切って買ってみてはどうだろう?

例えば、フィットネスブーツで基本的な動作を習得したら、例えばスラロームならSeba High系、アグレッシブならUSD Carbon系を買ってしまう。そして、それらのブーツを履いて練習して、ブーツの性能おかげでどんどん上達してしまえば良いと思うのだ。

ただし、オーバースペックというか、少し滑れるようになっただけでは使いこなせないギアもある。

例えばSeba TRiX。レスポンスが良いのと同時に、足首の自由さと適度なサポートのバランスの良く、僕自身もこのブーツが好きだ。しかし『スケートに乗る』感覚が掴める前に履いても、足元がぐらぐらするブーツでしかない可能性がある。そうなると、カーボンソールの恩恵なんて微塵も感じられないはずで、ただただもったいないだけになってしまう。

滑りこんだ人の扱いやすいと、経験の浅い人の扱いやすいは、質が異なることがあるので、そこは信頼できる専門店のスタッフと相談して欲しい。

このように、必ずしも高価なギアが自分にとって良いギアとは限らない。

しかし、例えばブーツが高い理由が『軽さ』であれば、技術レベルに関係なく、その恩恵を受けることができるはずだ。軽ければ、疲れにくいし取り回しやすい。上級者であれば多少の重くても自分の技術でカバーできるし、無駄な力みもないので疲れるのが遅い。ところが経験が浅ければ浅いほど、軽い方が良い。そもそも思うように滑れないのに、ブーツという重りを足に付けているのだから、すぐに疲れてしまう。そこで少しでも軽いものであれば、足が動かしやすくなって楽しみやすくなり、楽しくて滑る時間が増えれば、それだけ上達していくのも早い。しかし、重くて取り回しにくいブーツであれば、きっと履くのもおっくうになっていくことも考えられる。

もちろん、ブーツ選びの基準は軽さだけではなく、多少重くても扱いやすいブーツもある。Seba Highなどはその部類だろう。一般的なブーツに比べてソールが重くできている。しかしその重さには、操作性をアップさせる構造のため、という理由がある。だから、重さよりもその操作性にメリットを感じて、こんなにもSeba Highが広まったのだ。

もちろん初心者が頼れるギアはブーツだけではない。

ウィールならグリップ力が高くて、適度に硬いものがオススメ。

グリップしてくれると、ブーツやウィールを倒し込んでもすっぽ抜ける感じがしないので、クロスオーバーなどウィールのアウトエッジにしっかり乗る技を安心して練習できる。

さらに、柔らかいウレタン素材だとウィールが押し潰されるように変形して、タイヤに空気が入っていない自転車のようにスピードが出にくい。そのため、硬めのウィールの方が楽に速度を出せて、スピード感を楽しめるのだ。また硬い方が、Tストップやパワースライドなどのスライド技が練習しやすく楽める。

グリップ力と高硬度は両立しにくい特性だと思うかもしれないけれど、例えば屋外用のHyperのConcrete、MatterのJuiceやCrazy Grueなどは、少々値段が高くても両方の性能だけでなく、すり減りにくい耐久性までも兼ね備えている優秀なウィールだ。

ベアリングもしかり。軽い力で良く回るべリングに越したことはない。

各ベアリングの特性にもよるけれど、軽い力で回るものは速いスピードを出しやすく、またWITCHのTYPE-Gなどの低速でも長く回転し続けてくれるものだと、ゆっくり落ち着いて新しい技にチャレンジしやすくなる。

さらにインライン用として販売されているベアリングは工業用より耐久性が高いものが多いので、結果として懐にも優しいものとなる。

このような訳で、「まだ始めたばかりだから……」と言って安いギアを使い続けるのではなく、多少高価でも自分の滑りをサポートしてくれるギアを使っていくと、上達が早くなったり快適にスケートを楽しめるようになるはず。

ただし、くれぐれも専門店のスタッフや自分のお財布と相談することも忘れずに。(笑

《高田健一》

ライター