column
コンシエルジュの閑話休題

【 第56話 | 2015.1.29 】

ただただ滑る!

スラロームをする人は公園などのパイロンのマーキングがある場所の、アグレッシブをする人はパークやストリートのスポットの、最寄りまで車や電車で行き、そこからは徒歩で移動して、着いたらブーツを履く。けっこうそんな人が多い気がします。

なので、なかなか長距離を滑る機会がなく、インラインスケートの基礎の基礎である『スケーティング』が弱い人をちょくちょく見かけたりします。

でも、この基礎の基礎であるスケーティングの安定感が足りないと、どんなに技の練習しても習得が遅かったりする。あるいはそれ以前の話で、そもそも技に入る前の滑りや体勢が不安定だと、安定した体勢で技に入れず、練習の効率も悪い。

そのためにも、安定感のあるスケーティングが大切になってくるのだ。

スケーティングの練習と言っても、何もそんなに難しい話ではない。まずはただひたすら滑るだけ。最初は本当にそれだけで十分。近所の公園や土手の上など、手軽に気軽に滑れる場所で、できれば20分以上滑る。

滑っていて、転ぶ不安感が薄らいできたら、蹴り出した後に持ち上げた足を、できるだけもう片方の足の近くに置いてあげることを意識する。

そうすることによって、蹴り出す時間が長くなってスピードが出しやすくなる。と同時に、片足になっている時間も長くなるため、片足だけに乗る安定感、ひいてはスケーティング全体の安定感も上がってくる。

そのため、慣れてきたら、わざとゆっくり上げた足を戻すようにして、片足になっている時間を長くして滑ると、より安定感が増してくる。

次は蹴った後に戻す足を着地させる時、1輪目のアウトエッジから差し込ませるようにする。そして蹴りながらインエッジに乗り換えて力強いストライドで蹴り出す。

慣れてきたら、このアウトエッジ入りのストライドをできるだけゆっくりと、できるだけ足首を曲げて腰を落とした体勢で、止まるか止まらないかの超低速で行うようにする。これをスケートを履く度に5〜10分くらい練習していったら、かなりどっしりとした安定感のある滑りができるようになっていくはず。

とりあえずここまでやれば、必要十分なスケーティング技術を身に付けられたことになると思う。もちろん、もっと上を見ればキリがなく、スピードスケートではこれより深く精密なスケーティング技術が必要になってくるだろう。しかし、ここまで習得すれば、普通はスケーティングで困ることはない。

さて、最後の止まるくらいゆっくり滑る練習、実はホッケーのスケーティング練習方法のひとつの簡易版なのだけれど、安定感が上がるだけでなく、ダッシュ力アップにもかなり効果がある。そして速いダッシュだけでなく、少ない歩数、少ない力で効率的に加速することも可能になるので、ジャンル問わず、習得しておくと便利だし、走っても疲れにくくなる。

例えば、スラロームなら助走が短かくなったり、スピードスラロームで上位に挑めるようになったりするし、アグレッシブならセクション間での加速が素早くなる分、体勢を整えて次のセクションに入れたりするし、街中を滑る時はひと蹴りで人混みから抜け出せたりする。

上に挙げたのはほんの一例だけれど、とにかくこの技術が便利なのは間違いないので、できればここまでスケーティング技術を引き上げて欲しいと思う。

とは言え、いろんな技を練習している場合、ただ単に滑るだけだと物足りなく感じることもあるはず。

そこでちょっと趣向を変えて、足回りに変化を持たせてみるのはどうだろうか?

例えば、110mmのウィールが3輪の3x110フレームとウィールに変えてみる。スピードスラローム用ならフレーム長が250mmくらいなので、取り回しやすさは変わらないまま、大きいウィールのおかげでママチャリと同じくらいのスピードなら楽に出せる。『スピードスケートをするぞ!』と気構えることなく、高速で滑る楽しさを味わえるのだ。

あるいは、夜に滑ることが多いのなら、LEDが仕込んである発光ウィールに取り替えてみる。かなり明るく光るので、目立つし、安全だし、何より単純に楽しい気分になる。ウィールの構造上、滑走時に多少はガタガタする感じはあるものの、72〜80mmなら全輪に入れても、ほとんど回転が重くならずに滑りを楽しむことができる。

そんなこんなでこの寒い季節、細かい動きや技の練習が億劫になったら、ただただひたすらに滑ってみる。でも飽きてきたらフレームやウィールを換装して気分転換したりして、インラインスケートの基礎の基礎である、スケーティング技術のベースアップを図るのはいかがでしょうか?

《高田健一》

ライター