column
コンシエルジュの閑話休題

【 第58話 | 2016.4.1 】

初めてのSEBA《1》

3月に入るとインラインスケートの各メーカーの新モデルが登場し始め、毎年桜の季節になると、スラローマー御用達のメーカー『Sebaskates』のブーツも店頭に出揃い始める頃。

そして今、スラロームを楽しんでいる人たちの中には、前々から虎視眈々と狙っていたり、あるいはSebaを履いている人たちからそそのかされたりして、今年初めてSebaのブーツの購入を検討している人もいることでしょう。

さて、そんなSebaskatesの一群のブーツ、通称『Seba(セバ)』と呼ばれていますが、このSebaを履いて滑ったことのない人には、一体全体Sebaの何が良くて、どのモデルを買うべきなのか分からないと思います。しかも値段は高いから買い物に失敗はしたくない。ところが、メーカーから適切な購入アドバイスがされている訳でもない。そこで、初めてSebaのブーツを買う際のアドバイスをしたいと思います。

ちなみに僕は現在、Sebaskatesやショップからは何のサポートも受けていないため、初めてSebaのブーツの購入を検討している人たちに、僕自身が今まで13足のSebaを履いてきた経験から、本心から伝えたいことを率直に書いていきます。

まず、何はさておき、初めてのSebaとしてオススメしたいのが『Seba High(セバハイ)』。

10年前、僕がその性能に惚れ込んで、日本国内での正規販売に奔走するきっかけになったブーツが、韓国で買ってきた初代のSeba Highです。当時、スラローム用として使用されていたどのブーツよりも操作性が良く、Sebaの名を世界的に広めたブーツで、その性能は今もそのまま引き継がれています。

機敏な操作を可能にしている最大の特徴が、硬いソール。樹脂部分はねじれに強く、またフレームを取り付ける部分には厚いメタルプレートが埋め込まれているため、微妙な加重の加減もダイレクトにフレームやウィールに伝えることが可能。そして、そのソールの上に置かれる足をタイトで硬めのアッパーで覆うことによって、無駄なく足の動きに追従してくれるブーツとなっている。

ただし、このソールとタイトな作りがデメリットになっていて、ブーツの重量が重い上に硬く感じる足入れ感で、決して履き心地の良いブーツとは言えない。さらにかかとの収まりも悪く、浮きやすい。

しかし、これらの欠点を補って余りある程、反応の良い操作感が気持ち良く、発売から10年以上経った今でも定番商品として販売されています。また、新品時の硬い足入れ感やかかとの浮きも、履き込むにつれて足に馴染んで柔らかくなってきて、かかとの浮きやブーツの重さも気にならなくなってくるでしょう。

10年前にスラロームの頂点に立っていたSebastien Laffargueが開発した世界初のスラローム用ブーツ『Seba High』は、間違いなくMy first Sebaに最もふさわしいブーツでしょう!

と、いくらSeba Highを絶賛しても、人によっては細身のブーツが足に合わないこともありますし、ブーツ自体の硬さに抵抗がある人もいるはずです。そういった人にオススメしたいのが、『Seba High Light』と『Seba FR1』の2足。

まずは『Seba High Light』から。

このブーツは名前からも分かる通り、Seba Highの軽量版です。インナーブーツがアウターと一体になっている分だけ軽くなっているのだけれど、最も重いソール部分は同共通なので、驚くほど劇的な軽量化が図られている訳ではありません。

重要なのはその軽量化ではありません。ブーツのアッパー部分がSebaにしてはかなり柔らかく作られているため、硬さを感じない履き心地で、他メーカーのフィットネスブーツを履いていた人でも、それほど違和感なく履けると思います。柔くても耐久性は問題なし。ただし、サポート力を上げようと、靴ひもやバックルをきつく締めても痛いだけなので、しっかりとしたサポートが欲しいのなら、多少硬く感じてもSeba Highを選択すべきでしょう。

剛性の高いソールと埋め込みメタルプレートはSeba Highのそれと同じ。そのため、踏み込みの反応の良さも同様に味わえるので、十分にスラロームの入門機として十分な性能を持っているブーツです。Seba Highの硬さに馴染めそうにない人でも、このSeba High LightならSebaの良さを味わえるはず。

またスラロームだけでなく、シティラン(CR)やロングラン(LR)などで街中を滑ることも多いのなら、Seba Highよりもこちらの方が快適に滑れるかと思います。

それから、初めて買うSebaのブーツで、7万も8万もつぎ込む人はいないとは思いますが、ソールがカーボン製の『Seba High Light Carbon』は、Seba HighやSeba High Lightと異なり、カフが低く柔らかいものが付いているので、カフに頼らない滑りができるようになるまでは、購入は控えた方が無難です。Seba High用のカフを別途購入する方法もあるけれど、Seba High Light CarbonはSebaの中でも高価なのに競技用でもなく、贅沢品の部類と思われるので、初めは樹脂ソールのSeba High Lightの方を勧めます。

さて、『Seba FR1』の説明と、最初に買ってはいけないSebaのブーツについては、次回に続きます!

《高田健一》

ライター