column
コンシエルジュの閑話休題

【 第59話 | 2016.4.5 】

初めてのSEBA《2》

前回は『Seba High』と『Seba High Light』について書きましたが、今回はその続きです。

では早速、初めてのSebaでオススメする3足目『Seba FR1』の説明を。

通称『FR(エフアール)』と呼ばれているこのブーツ、実はスラローム用ではありません!(笑 FRの名称の由来はFree Ride、つまり街中を自在に走り回るために作られたブーツなのです。

ところが、Sebaskates(当初のメーカー名はUniverskate)が日本で販売を始めた2007年と翌2008年、Seba Highより安価なこのFRの認知を広めたかった日本の代理店が、当時の日本のライダーたちにこのブーツを履かせてスラロームのデモを行ったのです。おそらくその流れで、FRもスラローム用ブーツだと思っている人たちが多いのだと思います。

とは言え、スラロームに不向きな訳ではありません。Seba Highと同じく、硬いソールとメタルプレートを持っているのブーツなので、踏み込みの反応は悪くありません。

また、ふかふかな厚めのウレタンフォームのインナーブーツが入っているため、より多くの人の足に適応しやすい構造になっています。

しかし、そのふかふかなインナーブーツのデメリットとして、タイトなフィッティングのSeba Highよりもブーツと足の一体感や連動性が劣り、機敏な動きをするのには、どうしてもSeba Highの方に軍配が上がります。

それから26.0cm以下のブーツにも、スラローム用としては少し長めの243mmのフレームが付いています。しかしフレームは長い方が安定感が増すので、スラローム初心者には何の問題もありません。

ただし気を付けて欲しいのは、同じFRシリーズでも、『FRX』は、ソールにメタルプレートが埋め込まれていないため、とっても残念なことに、Sebaのブーツならではの良さを味わうことができません。定価がFR1より3割も安いですが、安いものは安いなりの理由があります。購入の際は気を付けてください。

最後に、初めてSebaのブーツを買う人にとって要注意のTRIXシリーズについて。

2015年から販売された『TRIX 2』ですが、オールマイティに使える上にSeba Highより安価なため、それなりに売れているようです。僕も同シリーズのカーボンソール版の『TRIX』を使っていて、スラロームをするにしても街乗りに使うにしても、履き心地も柔らかめで取り回しやすいので、お気に入りのブーツのひとつです。

しかしながら、大きな問題が存在します。それはこのブーツ独自の『トライアングルカフ』です。

他の一般的なブーツと異なり、足首の上を覆う筒状のカフの代わりに、三叉のプラスチックのパーツ『トライアングルカフ』があります。このパーツが組み込まれた構造のおかげで足首回りの自由度が上がると同時に、横方向への足の支えも必要最低限担保されています。これが本当に絶妙で、素晴らしいんです。ですが、そう思えるのはあくまでカフのサポートがなくても、それなりに自在に滑ることができる人に限ります。実はこのブーツの開発に関わったキム・スンジン君は、小学生の頃は靴ひもを緩く結んで脱ぎ履きがしやすいスニーカーのような、ほとんど締めていないような状態のスケートブーツを履いて滑っていました。そんな彼のブーツの好みが強く反映されているので、足首回りの自由度がかなり高い構造となっているのだと推測します。

ところが、インラインスケート初心者やスラローム技術が未熟な人が履くと、この特徴が裏目に出てしまい、足首の動きが自由過ぎてブーツがぐらついて不安定に感じたり、ブーツをインエッジ側やアウトエッジ側に極端に倒して乗る癖が付いてしまう可能性があるのです。もし足を倒して乗る癖ができてしまうと、足首への負担も掛かるのはもちろんのこと、ブーツ自体も横方向に『くの字』に曲がる癖が付いてしまい、普通に真上に乗って滑るのが難しくなります。以前から『TRIXのブーツは曲がってすぐにダメになる』といった話を聞きますが、その原因はこのような普段からのインエッジ乗りやアウトエッジ乗りが主な原因だと思われます。

こういった訳で、お店の謳い文句や価格、あるいはブーツのデザインに惹かれたとしても、カフに頼らなくても滑れるようになるまでは、TRIXシリーズの購入は避けた方が良いと思います。足の筋力が弱い女性や足首に不安を抱えている人も同様です。

Sebaのブーツは基本的に少しタイトに感じるくらいのサイズを選び、ジャストサイズで履くことでその性能を発揮できるようになっています。そのため、購入の際は必ず実店舗に足を運んで、実際に自分の足で試し履きをしてから購入して欲しいと思います。

東京でしたら、そう、S-FOURへ。(笑 僕がこのコラムで購入を勧めていないFRXやTRIX2は元々店頭に置いてありませんし、10年前からSebaのブーツを販売している店員さんが対応してくれるので、ブーツ選びのアドバイスも的確で信用できるものです。ネット上でポチッとする方が楽だとは思いますが、決して安くはない5万円の買い物です。多少面倒でも、確実に自分に合った商品を購入して欲しいと思います。

《高田健一》

ライター