column
コンシエルジュの閑話休題

【 第14話 | 2014.10.6 】

なめらか&軽やか 重心移動編《1》

第11話でなめらか&軽やかに滑るコツとして、僕自身が実践し続けている“2輪目乗り”の話を取り上げた。これは足裏の一部の感覚を養って滑る、少し繊細な滑り方だったが、今回は“2輪目乗り”とは打って変わって、体全体を使って効率良くスマートに滑る話。

管理人がスラロームをするのを見て、「滑りが軽いね〜」と良く言われる。

自分としては軽く滑るというよりも、力まずに滑るように心掛けている。上半身や腕を『フンッフンッ!』と大きく振り回して力んで滑ったり、大技などの後の減速を取り戻すのにあからさまに蹴って加速したりするのは、かっこ良いとは思えなかったからだ。例として挙げるにはおこがましすぎるが、アイススケートのフィギュアの荒川静香さんや浅田真央さんの演技を見ていると、しなやかで軽やかな印象はあっても、力ずくで技をやっているようには見えないはず。どれだけ近付けるかはさておき、理想はあのような滑りだ。

そこで、力まずに滑るために行っていることのひとつが、的確な“重心移動”なのだ。

スケートをしていると、この“重心移動”と言う言葉を良く耳にすると思うが、そもそも人間の『重心』はどこにあるのか?

諸説あるが、だいたいヘソの奥辺りと思っておけば、大きくズレることはないだろう。

滑っている時に、このヘソの奥をどこに位置させるか、あるいはどこからどこに動かすのか、こういったことがスムーズなスケーティングのポイントとなる。そしてこのヘソの奥、つまり重心を移動させることを“重心移動”と呼んでいる。

余談だが、『荷重する』と言うのは『体重を掛けること』だが、『重心を乗せること』と言い換えることもできる。

“重心移動”について、上記のように書くと小難しく思うかも知れないが、普段、多くの人はこの“重心移動”を無意識で行っている。

歩いたり走ったりする時、一歩一歩前に出す足に、重心を乗せ替えて前に進んでいる。この重心の乗せ替えがスムーズでないと、歩いたり走ったりするのが難しくなるのだけれど、そんなことを意識して足を運んでいる人はほとんどいないだろう。

ちなみにこれが“重心移動”。

ほら、普段からやっているでしょ?

ところが、スケートブーツを履いて体が不安定な状態になると、この“重心移動”がとたんに難しくなり、そもそも重心を最適な位置に置くことができなかったりする。ブーツの上のどの辺りにヘソを置いてあげると安定するのか、歩くことと違って、初めのうちはそういったこともしっかり意識しないとできない。そう、意識しないとできないはずなのに、意識していないがために上手く滑れていない初心者スケーターがけっこういる。初心者ならまだしも、それなりに滑走時間が長いスケーターでも、重心の位置を意識したことがないために、イマイチな滑りのままの人も見かける。これではなかなか次のステップに進めず、とてももったいない。

さて前置きが長くなったが、重心を的確なポジションに乗せ換えながら、ひと蹴りひと蹴り滑っていくこと、要するにこれが『スケートに乗れている』ことに繋がる。このなめらかな“重心移動”をスラローム中でも行う利点は大きく分けて2つ。

ひとつは『加速』、もうひとつは『スムーズな動き』。

『加速』に関しては、簡単に体験してもらえる。

スケートを履いて止まった状態で軽く後ろにのけぞってから、おじぎをするように上半身を倒しながら片足を前に出してみるのだ。きっとそのまま前に進んでいくだろう。当たり前と思うかも知れないが、これこそが“重心移動”による加速なのだ。静止状態から前進したのだから、これを進んでいる最中に行えば加速する、という理屈だ。ただし、スラローム中では上半身をのけぞらせてから前に倒す、といった大袈裟なことはしない。もっとスマートに“重心移動”を行って加速する、あるいは減速を防ぐ。

そして『スムーズな動き』については次回に続きます!

《高田健一》

ライター