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コンシエルジュの閑話休題

【 第15話 | 2014.10.9 】

なめらか&軽やか 重心移動編《2》

今回は第14話の続きで、“重心移動”の後編の話。

さて、スラローム中に的確な“重心移動”を行うことの、2つめの利点『スムーズな動き』について。

これは技を行う時などに『的確なポジションに重心を乗せ続ける』ということ。

分かりやすいのがモホークターン。バックから体を開いて片足を進行方向に向けて着地し、と同時にその足に重心を完全に移して100%荷重してから、荷重が掛かっていないもう片方の足を前に向けて上半身も両足も前を向く。この体を開いた後の片足から片足へ、10:0から0:10への大きな“重心移動”がきっちりできないと、スムーズに前を向けない。重心移動前の荷重足に重心が残っていると、足を引きずりながら揃えるようになってしまうのだが、大丈夫だろうか?

あるいはクリスクロスのように前向きのまま足だけが入れ替わる場合は、しっかり先行足(進行方向に対して前側の足)荷重あるいは後行足(進行方向に対して後ろ側の足)荷重をキープして、上半身が後ろに行ったり前に行ったり無駄にブレた動きをしていないだろうか?

スラロームだけでなく、普通に滑っている時でも、両足に均等に荷重することはほとんどない。必ずと言っていいほど、どちらかの足により多くの荷重をしている。そして何か動作をすると、その左右の足の荷重バランスが変わる。だから、もし重心移動が中途半端のまま、次の動作に入ろうとすると、どうしても無理が生じてしまい、ぎこちない動きになってしまうはずだ。

例えば、飛燕がなめらかにできない理由の多くもここにある。

僕の飛燕は、フロントクロス時の先行足に重心を乗せ続け、次のフロントクロス直前でもう片方の足に重心を乗せ替えるようにしている。重心を乗せ続けている足は常に腰骨の下に入れておき、文字通り重心を乗せているのだ。(これはかなり重要なことで、荷重足を完全に自分のコントロール下に置くためには必須の乗り方なのに、できていない人が意外と多い!)そしてアンチバッククロスからターンをして後行足が先行足を追い抜く瞬間に重心を乗せ替える。的確に重心の位置の維持と移動が行われていれば、上半身が上下前後左右にブレることなく一定のポジションを維持したまま、下半身だけが前後のクロスと半回転のターンをなめらかに繰り返していく。

もしこの飛燕の重心移動のやり方が良く分からない場合は、まず蹴らない“しゃなり”を試してみると良いだろう。常に前荷重で、交互に入れ替わる先行足に重心を乗せ替え続け、決して後行足で蹴って加速することはしないのだ。モホークターンのように上半身を大きく使って重心を移動させる訳ではないので分かりづらいが、先行足に体重を掛けるようにして、踏み込みながらウィールを転がすようにするのだ。この方法で加速していければ、上半身を固定したまま、重心移動するコツを掴めたも同然!

本当はこのしゃなりを練習する前に、“ウォーキング”を練習しておくとベストだし、この“ウォーキング”と“しゃなり”の延長線上でクロスと重心移動を意識するだけで飛燕ができる『目から鱗の飛燕講座』も含め、この辺りの話は自分の講習会で実際に滑りながら詳しく教えているので、ぜひ講習会に来るか、移動講習会を依頼してください!(笑

さて話を戻して“重心移動”。

このように自分は重心の位置、つまり荷重の位置やバランスを意識しつつ、重心がなめらかに平行移動するのをイメージして滑っている。

幽霊が移動するようにスーッと移動させればなめらかでスムーズに、モグラ叩きのモグラのように瞬時に適所に乗せ替えていけば空手の型のようなパキッパキッとした動きになる。これに関しては、どちらが良いとか悪いとかと言う話ではなく、好みの問題である。どんなスタイルを目指すのかによって“重心移動”の方法を選べば良いし、また中途半端な“重心移動”になっている場合は、どちらのスタイルでもうまくできないはずだ。

自分に関して言うと、水が高い所から低い所に流れるように、右足から左足へ、あるいは左足から右足へ重心を移動させることを心掛けていたら、自然と滑りもなめらかになり、決してスピードは速くないけれど軽やかな滑りのスタイルに落ち着いていった。もちろん“2輪目乗り”ができていなければ、この水の流れのような“重心移動”ができていなかった可能性は高いと思っている。常に2輪目に乗り続けることによって、つま先荷重やかかと荷重というブーツ内での重心移動を行う必要がなくなったため、足裏の荷重ポイントが一定となって、左右の足の荷重配分や重心の動きだけに注力すれば、スムーズな重心移動を実現できるようになったからだ。それほどまでに自分にとっては、“2輪目乗り”となめらかな“重心移動”は切っても切り離せない関係になっている。

2回に渡る長い話になってしまったけれど、結局はスラロームと言えども常に荷重すべき足への的確な“重心移動”を心掛け、重心を乗せ替えたら『スケートに乗る』、できれば『スケートに乗って、踏んで、滑らせる』ことも意識する。ただ足の動きだけをトレースしていったのでは、なめらかで軽やかなスラロームはできない、ということなのだ。

《高田健一》

ライター